フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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favo

こんにちは。今回は★Blue Cometさんの「カルマの願い箱」のレビューです。

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★favo
ジャンル:現代ファンタジーノベル
プレイ時間:コンプまで1時間半~2時間程度
分岐:ED6種
ツール:NScripter
リリース:2022/12

はい、crAsM.Mビジュアルノベルオンリーの記事でちょっとだけ触れた作品です。レビューの形でちゃんと扱っておきたいと思います。
いつも通りあらすじを簡単に紹介するとこんな感じ。

主人公の如月零音(きさらぎ・れいん)は音楽一家の長男で高校2年生。ピアノの天才と言われコンクールの優勝歴もありますが、フルート奏者だった父の影響もあり高校では吹奏楽部に所属。「親友」の日向晴夫(ひゅうが・はるお)とともに楽しい学校生活を送りながら、夜にはピアノの練習に励んでいます。
ある日零音が帰宅中に迷い込んだ不思議な街で、謎の人物ミレーから”3つの願いが叶う”というアンティークな箱を受け取ります。そんな怪しい力に頼ることはないと箱をしまい込むが、目の前で晴夫が車にはねられるのを目撃した零音は箱に願いをかける。願いはどのような形で叶うのか。その代償は何だったのか。彼らがまた笑顔で音楽に取り組むことはできるのか…


まず主人公の名前が変わっていますよね。零音と書いてれいんと読む。英語で雨を意味するこのネーミングは、彼が生まれたときに雨が降っていたことも由来の1つだそうです。雨を好む零音はなぜ雨が好きになったのか。その答えは彼がピアノの才能を持ち合わせていたことにありました。

幼いころからピアニストとしての才能をあらわにしていた彼は、周囲の”普通の子供”と一緒に遊ぶことができなかったのです。万一転んで手にけがをさせたら困る、と周りの子供たちも遊びに誘うのを遠慮してしまいます。悲しいのはそれが本人の希望と一致していなかったことです。彼は自分のことをピアニストとして見られてしまうのがあまり好きではなかった。一人の人間として友達と遊んだり漫画を読んだりしたかった。しかしそれが叶わなかった彼は、周りで遊ぶ子供たちの声が聞こえない雨の日が好きなのでした。

以前紹介した「夏ゆめ彼方」も主人公朝川桂一は才能ある少年でした。彼の場合は将棋でしたが、将来を期待される天才だったという点では一緒です。しかし桂一と零音では才能に対する考え方は真逆でした。周りとは違うんだ、自分は選ばれし人間なんだという意識の強かった桂一に対し、周りと一緒に遊びたかった零音。結果的に彼らの考え方は違ってもどちらもそれに至る思考の過程が描かれるので、読んでいて物語をスッと受け入れやすいんですね。

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そんな主人公零音は高校に入って初めて自分をピアノの天才という色眼鏡を通さずに見てくれる人物、晴夫に出会います。ようやく自分という人間を見てくれる人物と出会えた彼は本当にうれしそうですし、彼らの交流は私の心も軽くしてくれました。雨と晴れのように対比が効いた性格なのも分かりやすいですね。


さて、ここまでは物語の前提であって、本作のストーリーはミレーから願い箱をもらうところからが本編です。最初ははなから信じてもいないし使うつもりもなかった零音ですが、晴夫が交通事故に遭うのを目撃しては箱を使わないわけにはいきません。ここでどんな願いをかけるかで物語は分岐していくわけです。

しかしこんな怪しい箱が簡単に思い通りに願いをかなえてくれるわけはありません。確かに願った通りではあるけれどもそういう事じゃない。零音はままならなさに悩んでいくことになります。
晴夫のために苦悩している姿がきちんと描かれるので、プレイヤーである私も頑張って良い結末を目指そう! と思えるような内容でした。


零音の人間関係は晴夫だけではありません。吹奏楽部の仲間であったり、クラスメイトであったりも登場して零音と晴夫に影響していくことになります。交通事故についてひと段落した後は今度は人間関係に悩まされるようになるのです。うっすらBLの匂いも。
しかし常に天才という目で見られており対等なコミュニケーションの経験に乏しい零音は少し感覚がずれているんですよね。対する晴夫が良い人過ぎて一時は見てられないくらいの状態になりますが、真ルートでのこの解決の仕方がよかった。脇役のセツナちゃんもいい人過ぎて泣けます(彼女はそれ以外のルートでは別にいい人って感じでもないんですが、晴夫は常に聖人のようです)。周囲に恵まれた零音は幸せですね。
ただ恋愛がらみについては唐突な印象が拭えないですね。このままでも不自然とは言いませんが、物語前半で何か予兆みたいなものがあると嬉しいかなと思いました。

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もう一人主要人物として、雪村奏(ゆきむら・かなで)がいます。彼は零音が優勝したピアノコンクールで2位だったライバル。高校で吹奏楽部に入ってフルートを吹いたりしている零音に対して「ピアノはどうしたんだよ」というような態度をとります。この件については願い箱とあまり関わりがないというか、他の問題と断絶されている感じを受けました。とはいえ真ルートでのあのまとめ方は綺麗だったのでこれはこれでありだと感じました。ここでも晴夫の活躍ぶりがすごかった!(サブストーリー5を読んでいると奏の反省も理解できると思います)

シナリオに関してもう一つ気になったのは、結局願いを3つ叶えたときに起きる”何か”がはっきりしていないかなという点です。


さて、本作は音楽がテーマになっていることもあり、ショパンのピアノ曲がBGMとして使われています。零音のテーマともいえるのが名前ともかかわる「雨だれのプレリュード Op.28-15」で、本編開始後すぐに耳にすることでしょう。その直後には「ワルツイ短調(遺作)」。実はこの曲は私が初めて弾いたショパンの曲で個人的な思い入れもあって嬉しかったです。同じく使用されている「木枯らしのエチュード」「別れの曲」などより知名度が低い曲なので、よくこの曲の素材あったな~などと謎の感心をしていました。これらの曲を含め使用されているBGMはおまけから聞くことができます。「木枯らし」は本編内で使用されているときは冒頭がカットされていますが、おまけ内では通して聴けます。



本作のシステムはやや変わっています。通常のノベルゲームのように任意の場所でセーブ、ロードすることができません。代わりにシナリオが細かく章に分かれていて、章ごとにプレイできる形になっています。以前紹介した作品でいうと「RADIANT*SIGN」に似ています。しかし一本道だったRADIANT*SIGNと違い本作は選択肢も複数あり分岐も複雑です。正直このシステムは分岐がないか、あるにしても単純なものにしか向かないんじゃないかと疑問でした。選んだ選択肢によって2つに分岐する程度ならともかく、複数の選択肢の組み合わせで分岐したり、あるいは合流したりといった仕掛けはかなりやりにくいと思います。しかし本作は入念にデバッグされておりかつ章区切りも計算されているらしく、繋がりがおかしいと感じられるようなことはありませんでした。さらに新章解放時のエフェクトなども凝っています。なぜ開発の手間もかかるだろうにこのシステムを採用したのか考えるに、私が思ったのはサブストーリーの演出効果でした。本作は本編を読み進めるうちにサブストーリーも解放されていきます。おおよそ時系列順に解放されるため、メインストーリーを進めつつサブストーリーは解放され次第読んでいくというプレイスタイルが本作を味わうのにちょうどいいのかなと感じます。そのため区切りの多いこのシステムを採用し、メインストーリーとサブストーリーを往復させようという狙いだったのではないでしょうか。確かにサブストーリーの内容を全部本編に組み込んで自然に分岐させるのはかなり難しいように思えるので、なるほど効果的かもしれないと思いました。


もう一つ作者さんの本作にかける執念のようなものを感じた話をしましょう。
私がおまけ内の登場人物紹介を読んでいた時です。そこでちょっと私の常識にはなかった文を目にします。

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「※本編には登場していません」
だと?!


登場してない人物を紹介する必要があるのか???
crAsM.Mビジュアルノベルオンリーで作者の深嶺ユミアさんと話す機会があったので直接聞いてみました。すると非常に筋の通った答えが返ってきてびっくり。

本編で零音たち吹奏楽部が練習している曲は「般若」という実在の難曲。私は吹奏楽は素人なので全く知らない曲でしたがかなり難しいらしいです。このこと自体は本編中やReadMe内で記述があるので気付いていました。
そしてこの曲を演奏するのに必要なパーカッションの人数が4人ということで、晴夫、パートリーダー(雨村理子)、後輩(安雲竜)、そして問題の人物(雪峯さくら)を割り当てていたが、結局物語の都合上さくら以外の3人しか本編での登場機会がなかったというのです!
しかしせっかく用意した設定だからおまけに入れちゃうという判断をしたということでした。
登場機会がなかったさくらちゃんが不憫なのか、作者に忘れられていなくて幸せなのかは分かりませんが、実在の曲からここまで設定を固めて作られた作品なのだなあということで感心しました。

この「般若」はYouTubeで聴けるので気になる方は聴いてみてください。ReadMe内にもURLがあります。私も聴いてみましたが、変わった曲で確かに難しそうだなと思いました。

そうそう、本作はTRUE END到達が難しめだと思うので、困ってしまったらReadMeをしっかり読んでみてくださいね。ちゃんとヒントが書かれてます。


3つの願いが叶う不思議な力というある種使い古されたネタでありながら(この辺は作内でもメタ的に言及されていますね。無人島のジョークは私も知っていましたし、猿の手は多分高校のときに課題で英語で読まされました。内容忘れたけど)、独自の調理法でおいしく出来上がった作品だと思います。ぜひプレイしてみてくださいね。

それでは。

こんにちは。今回は、先月公開の静本はるさんの新作「カッテナキミヘ」をレビューします。

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★favo
ジャンル:とあるアニメに関する短編集
プレイ時間:30分前後
分岐:なし。3本読むと最後のエピソードが解禁
ツール:吉里吉里
リリース:2022/5


以前レビューで取り上げた静本はるさんの「MY HOBBY IS 短編版」も素晴らしかったですが、本作に関しても非常に心揺さぶられるところがありました。コメディだったMY HOBBY ISとは違って本作はドキュメンタリー風ですが、広いジャンルでセンスを感じさせる作者さんだなと思っています。

本作には3本(+1本)の短編が入っており、それぞれ10分以内くらいのボリュームとなっています(公式の案内で3~5分となっていますが、5分よりはかかるんじゃないかなと思います)。その短編がどれも、視点人物は変わりながらもアニロボという架空の少年向け人気長寿アニメ(原作は漫画)に関する内容となっています。

短編はどの順で読んでもいいですが、私は左側から順に読みました。
最初は佐藤まさる編です。

まさるが小学校に通っていたころにアニロボは少年誌で連載開始し、たちまち人気漫画となってアニメ放送も開始します。毎回夢中になって漫画を読み、アニメを見ては学校の友達とアニロボの感想を言い合っていたまさる。しかし時がたち中学校に入るころには、「子供っぽい」という周囲の声に影響を受けてアニロボのことは忘れていくようになります。
アニロボを忘れて数年、彼が大学2年生になったころ、たまたまアニロボのシーズン6が放送開始されるという広告を見て、かつてアニロボにハマっていたころのことを思い出します。懐かしいなと思う程度の思い入れしかなかったが、深夜にシーズン1から全話再放送をするというニュースを見て視聴しているうちにアニロボに再度ハマっていく…

もうね、この展開がすごく「あるある~」「分かる!」「まさにそれ」のオンパレードなんですよ。
子供のころに夢中になったものはいつまで経っても忘れない(私の場合はそれがフリーゲームだったわけです)、中学生くらいになると、中二病とまではいかないまでもみんな背伸びしたくなって子供向けのものをバカにする傾向がある、むしろ大学生くらいだと懐かしんだり堂々と見たりする。周囲に子供っぽいとバカにされるんじゃないかと隠していたけど実際にはみんなそんなに冷たくない。むしろ話に乗ってくる。


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↑分かるよ~私もほしのの。エピローグのBGMがごがつのそら。テーマのオルゴール編曲なのに気付いた時は半日泣いたし、緑のRPGエピローグで緑の姫君のエンディングのピアノ編曲が流れてきたときにはまさるみたいになってました。


つづいて吉田なな編です。
ななはいわゆる腐女子です。アニロボは主に二次創作の同人誌を読んでいます。推しの作家の新刊は真っ先にゲット。24ページしかない薄い本を3時間もかけて読み、感謝の長文感想をしたためます。
そんな彼女、最近たまに妙な視線のようなものを感じることがあるそうです。その正体は、自分がメインターゲットではないことが明らかな子供向けアニメでBL妄想を繰り返し、推しのカツヨシが出てこないことに文句を言っていたことへの潜在的な負い目でした。

昔のように純粋な気持ちでアニロボを見ることができなくなってしまったなな。友人のにしちゃんには、"そういう層"向けの作品を教えてもらうがどうもハマれない。このあたりがなるほどポイントでしたね。私はあまり作品をカップリングで見ることをしないのですが(それよりは、ある特定のキャラクターが好き! とか、このシーンが好き!とかの方が多い)、ななの独白を見るとこうした心情もすごく納得できるんですよね。

そしてにしちゃんからシーズン6放送開始の報をもらった後。これがすごい。
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もうオタクの世界の解像度が高すぎて素晴らしい。何かを猛烈に好きだとアピールする文章(別に媒体は文章に限らないけど)って魅力的じゃないですか。それが実在のものではなくても。
私がただ好きなフリーゲームについて語るだけのブログを興味を持って読みに来てくれる方なら、この描写には必ず清々しさや微笑ましさ、そして共感を抱くはずです。最後に爆発したところで私も本作への理解が高まって爆発してしまいました。そう、私だってBrass Restorationで了が実梨に素直に謝って和解したところで「よくやった!」と机を拳でたたいたどころか、有名なコロンビアのアスキーアートみたいなポーズ取ってましたもん。(通じなかったらごめんなさい)


そして木村てるひこ編です。
最初の佐藤まさるが光のオタクだとすれば、木村てるひこは闇のオタクです。かつてアニロボが始まったころ小学生だったてるひこは、友達と一緒にアニロボに夢中になった。彼にとって原作アニロボ漫画とアニメのシーズン1はかけがえのない思い出です。しかし時がたてば様々なものが変わってきます。シーズン2以降のアニロボは、彼に言わせれば未就学児しか楽しまないようなワンパターンで、原作者を侮辱するような内容です。そしてその問題点を日々SNSに綴って同志との意見交換をしています。

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もう、光のオタクのみならず闇のオタクに関しても再現度が高すぎてびっくりする限り。こういう人いるよな~というのがすごく納得できるんです。私だって、プレイしたフリーゲームが全部が全部素晴らしいものだとは思っていないし、たまに面白さが全く分からなかったと感じることもあります。でもSNSでぼろくそには書かないし、ましてやファンのことをバカ呼ばわりしたりはしません。しかしいるんですよね、こういう人。彼らは執拗なまでの文句を言いながら毎週必ず視聴します。まるでケチをつけるのが目的であるかのように。今まではその心理が良く分かりませんでしたが、本作を見て、そういう心理からアンチになるのはたしかに分かる気がするかも、となりました。

てるひこ編最後の展開も実に"ありそう"なんですよ。もう何年も前の記憶って、そんなもんですよね。それでも思い出というのは大切なものです。彼がその後光に向かって歩みだせたのか、気になります。


そしてこの3編を読み終えると、最後のシナリオが始まります。これについては細かいことを述べるのはやめておきましょう。今回の主人公はこれまでの3人と違いオタクという訳ではありません。そんな彼はアニロボとどう交わり、何を思い、そしてどんな影響を受けるのか。希望を持てる最終話であることは間違いありません。

そして最後にこれを読了してからタイトル画面に戻ってくる流れが素晴らしい。一応ネタバレにならないよう少しぼかしますが、背景画像から心象を表現したり、音楽や環境音で場の流れを表現したりといった部分にセンスの鋭さを感じます。そのうえでタイトル画面とBGMの変化。よく見るとタイトルも変わってます。なるほどそういう意味が込められていたのね。
改めて漫画・アニメをはじめとした日本のオタク文化の持つ力を感じられます。


という訳で、私の文章をここまで読むような方はプレイして絶対に損しないので早くダウンロードしましょう。BoothはDLにPixivのアカウントが必要なので、なければ準備してください。
(8/31追記:本日付でふりーむからも公開されました。ふりーむ版はアカウントの登録などが不要なのでpixivアカウントの無い方はぜひこちらからプレイを!)

こんにちは。今回はTwincle Dropさんの「Brass Restoration」のレビューです。


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★favo
ジャンル:古の正統派学園ギャルゲー(後述)
プレイ時間:各ルート3時間/コンプリートまでで12時間ほど
分岐:攻略対象4人、それぞれでさらに数種類に分岐、計21エンド
ツール:吉里吉里
リリース:2004/7


今回は2004年公開と、この間の「魔王物語物語」よりさらに古い作品のご紹介となります。
ジャンルに古と書きましたが、ギャルゲーの"お約束"のオンパレードかつそれぞれのお約束が大変濃いのである種時代すら感じさせるような気がします。どういうことか一つずつ説明しましょう。

まずは主人公の瀧口了です。プロの打楽器奏者の父を持ち、自身も高校生ながら将来を嘱望される実力の持ち主。しかし両親を早くに亡くし、物語の冒頭で列車の事故から自身も左腕を失い、以前のような演奏ができなくなってしまいます。ということでお約束ポイント①「高校生ながら一人暮らし」。
そして、②意味不明なギャグ(?)を大量投入。
この時点では、一人暮らしはよくあるけど設定が重いなあという程度の感想でした。

続いて幼馴染の蘭実梨(あららぎ・みのり)です。これがまた強烈でした。お約束ポイント③幼馴染が毎日起こしに来る、④極度の天然ボケ(卵焼きをエッチなものだと思っているなど)、⑤謎の口癖(にゅにゅぅ)、⑥殺人料理(BSE入りはマジでシャレにならんので止めてくれ)、とこんな感じ。
実梨と了は毎日一緒に登校する仲ですが、⑦実梨がそういうそぶりを見せるのに了は全く恋愛対象として見ない。そして扱いがひどい。バカ呼ばわりは当たり前。変なことを言ったときはビシビシ叩きまくる、ことごとく実梨の立てたフラグを折る、しまいには立ち絵がモザイクになる(!)とやりたい放題。
ギャグがほとんど意味不明なのと合わせて、正直このあたりであまりにもひどいなと感じてプレイの継続を断念しかける程度でした。ちなみに意味不明なギャグとはこんな感じ。
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と、本作の序盤の印象はいいとは言えませんでしたが、結局最後までプレイしてよかったなという感想を持つに至りました。ではどこがよかったのかという話をしていきましょう。

上記のような突飛な設定のイメージが先行すると、作品全体がギャグであって、シナリオの出来云々よりも笑いのセンスが合うかどうかが重要という直感が働きます。しかし本作の本質はギャグとは程遠いマジの恋愛ものだったのです。
ギャグの部分を除いてみると、シナリオは実に王道の仕上がり。各攻略対象と恋愛関係になるかどうかという点だけでなく、その後2人の間に問題が発生し、それを乗り越えていくというまさにシリアス系ギャルゲーという内容となっています。私はこのギャップに騙され、そして本作の評価を見直すきっかけとなりました。


まず攻略対象の説明をしておきましょう。幼馴染の実梨は同じクラスでなおかつ部活も同じ吹奏楽部に属しています。美音(よしね)先輩はプロ級の腕前を持つフルート奏者でお嬢様な吹奏楽部の先輩。小瓜(こうり)は打楽器は未経験ながら優れたリズム感をもつ吹奏楽部の後輩。そして歌唱において類まれなる才能を持つ軽音楽部所属のボーイッシュ同級生、唯の4人です。攻略対象の属性もまさにザ・ギャルゲーといった感じですが、各キャラクターごとのルートでは私が前半で受けた印象とは全く違うシリアスさを抱えた内容になっています。

私が最初に入ったのは美音先輩ルートです。このルートでは、了に音楽の道をあきらめてほしくないという思いから美音先輩が義手をプレゼントしてくれます。再び音楽への希望を取り戻す了。しかし義手では演奏に限界があることを感じ、美音先輩の期待にも応えられないという意識を持つようになります。了は音楽や義手のこととは切り離しても美音先輩が好きなのか、といった自問自答や、美音先輩に思いを寄せる人物は了だけではなかったことから生じた昼ドラも真っ青のドロドロ具合。これらは序盤2~3時間のネガティブな印象を覆すのに十分でした。

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全員を攻略してみて一番好きだと感じたのは実梨ノーマルエンドです。
このルート前半での了は本当にクズ丸出しの思考をしています。実梨はどうせバカだから大丈夫、顔は可愛いしクラスでも人気あるみたいだから音楽に打ち込む代わりに恋愛してみるにはちょうどいいかな、みたいな卑劣な内心は実梨に見抜かれ、距離を置かれるようになってしまいます。そんな実梨に何とか認めてもらうため、子供のころの思い出などを頼りにどんな自分なら実梨に好きでいてもらえるかについて考えていきます。それに失敗し完全に愛想をつかされたバッドエンド。先にそれを見てからの、素直な気持ちを伝えてお互いに誤解があったことに気付くノーマルエンド。この差がとてもいいなと思ったのです。お互いに相手のことを想っていながらすれ違いがあったのが分かったあたりで思わずガッツポーズが出てしまったほどです。グッドエンドのように劇的な出来事によって心を持ち直す展開よりノーマルエンドのような展開の方が私は好きのようです。グッドエンド最後で美音先輩に助言をもらうあたりとかもすごくきれいで好きなんですけどね。


小瓜、唯ルートでもそれぞれ了との間に致命的なすれ違いが発生し、それに対して適切なアプローチができたかで分岐するのですが、音楽が生きがいだった了の苦悩や左腕の喪失に関わる問題がメインで扱われ、設定を活かした物語の構成になっているなと感じさせる内容でした。


本作において気になる点はやはり最初に述べたようにギャグが荒唐無稽すぎるのとたまに女の子の扱いがひどすぎることでしょう。いやそんなにバシバシ叩かなくても、とか、そのネタは全く伝わらないよ~とかにいちいちツッコんでしまうと物語に全く入り込めなくなってしまうでしょう。適度にスルーすることをお勧めします。
また、ギャグばかりの文章と後半のシリアスな展開はやはりマッチしません。その辺のバランス感覚ってすごく難しいと思うのですが、本作はあまりにも両者の融合を無視しすぎているように思います。
もう一つ挙げるとすると、キャラクターが全員「濃すぎる」。了と実梨については書きましたが、一番普通と感じられる小瓜でさえ「ぴきゃぅ」などの奇声といったギャルゲーでしか見ない特徴づけがあり、さすがに胃もたれしてきます。しかしこれらの登場人物が全員きちんと活躍するシナリオなのは流石といったところです。吹奏楽部でない唯は他のルートではほとんど絡みがありませんが、実梨や小瓜、美音先輩については他の人物のルートでもかなり重要な役割を果たします。こうした役割がきっちりしているゆえに、奇抜な特徴によるキャラクター付けがより不要に思えたのかもしれません。

また、攻略対象外の脇役キャラクターも脇役とは言えないレベルの活躍を見せてくれます。特に実梨の妹の蕾観(初登場時にどういう関係なのか分かりませんでしたが)や友人の航太郎はどのルートにおいても良い相談相手となり、時には衝突したり、激励を入れてくれたりとなくてはならない人物です。
特定のルートで重要な役割を果たす山口さんや幸乃さんもいい人ですね。


本作は音楽がテーマになっていることもあり、BGMはピアノ曲で固められており良い感じ。愉快な雰囲気の時に流れる、裏拍のリズムが印象的なあの曲が大好きです。
細かい推しポイントをもう一つ付け加えましょう。おまけ立ち絵鑑賞モードで複数人を同時に表示できる機能があるのって珍しくないですか?!

また、最初にあれだけ古い古い言ってきた今回のレビューですが、システム面は吉里吉里で作られており最近の作品と比べても不満がありません。既読スキップも高速ですし、セーブスロット数も十分。"直前の選択肢に戻る"という機能まで実装されており、これは相当珍しいのではないでしょうか。一つ、エンディング一覧画面が見つかりにくいところにあるのは注意です。メニューバーのヘルプ→このソフトについての画面の先にあります。多分これがないと全エンディング回収したかの判断がつきづらいんじゃないでしょうか。
私はエンディング回収はこの画面を頼りにやってきましたが、結構難しく感じたので分岐に関するアドバイスを書いておきましょう。
本作はおそらく好感度が一定以上ならグッドエンドに行けるというタイプのシステムではありません。選択シーンは相当な回数ある本作ですが、それらの大部分はルートには影響しないダミーになっていると思われます。各ルートにつき3~4個くらいの必須選択肢があり、そのフラグを立てたか否かによって分岐するのでしょう。そして、どの選択シーンがダミーなのか、そうでない場合にどの選択肢が正解なのかは初見では全く判断がつかないものが多いです。かなり前半の選択肢が必須となっている場合もあるので、エンディングが見つからないと思ったら思い切って2月上旬のデータからやり直してみるのも良いでしょう。上述したように既読スキップは優秀ですので回収も苦になりません。


最後に一つ。

私に蕾観ちゃんを攻略させろ~~!
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あ、航太郎さんとイチャイチャしてるシーンでもいいです。生き生きしてる蕾観ちゃんが見たい。

今回はHappy Bad Endさんの「私の名前を呼びなさい!」のご紹介となります。

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★favo
ジャンル:脱出アドベンチャー
プレイ時間:1時間~1時間半程度
分岐:5つ
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/8
備考:15推、残虐な描写あり


さて、「そしてパンになる」(R18版)以来となる年齢制限ありの作品のご紹介です。とはいっても本作において制限がある理由はエロ方面ではないです。主人公のシエラちゃんがとにかく酷い目に遭わされる。つまり暴力や残虐描写が制限の主因です。殴打や流血なんて甘い甘い。そんな感じなので、タイトルとスクリーンショットから、「俺様系彼氏とのラブコメっぽい話かな?」みたいなテンションで話を進めると痛い目に遭います。これはガチの警告なので、プレイされる方は十分な覚悟をもってStartボタンを押していただくようお願いします。
ReadMeでは15歳以上推奨となっていますが、正直15禁の「まい、ルーム」よりもずっとキツいと感じます。プレイして最初の感想が、「ノベコレってこれ掲載できるんだ…」となる程度には人を選ぶ作品です。


と、十分警告したので作品の中身のお話に移りましょう。
本作の目的は「ヤンデレマッドサイエンティストのリエルに監禁された主人公のシエラが、何とか隙をついて脱走する」と一文で説明できます。毎日12時から17時までの間が探索可能な時間です。その間に何とか必要な情報と玄関の鍵を手に入れ、脱出しなくてはなりません。この探索の緊張感を高めているのは、(入っちゃダメと言われた場所で)リエルに見つかると"お仕置き"されることでしょう。"様子を窺う"でうまくリエルとの距離を探りながら、時にはセーブ&ロードを駆使して監視の目をかいくぐらなくてはなりません。
逆に言うと、アイテム探しや謎解き自体は難しくありません。クリックポイント探しなどはないですし、マップ移動も選択肢でできます。暗証番号入力なんかがちょっとあるくらい。その分、よりリエルとのエンカウントが怖いんです。実際に誰か知らない人に監禁されたとして、出口を見つけるよりは犯人の監視をかわす方がずっと大変でしょうからね、ホラーっぽさの感じられる部分でした。

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このシステムの面を見ても、よく作りこまれているなと感じました。作者さんの公開作を見るとふりーむにもノベコレにも本作を含めて2作だけ。2作目にしてこの快適なユーザビリティーを実現したのなら、ゲーム制作においてセンスのある作者さんなのでしょう。
探索時、常時現在地が表示され、"見つかってはいけない"エリアなのかがすぐにわかるよう色分けされている、"状態"をクリックすることで現在のシエラの状態と特殊効果を確かめることができる、"考える"機能(実質ヒント機能)が利用可能で分かりやすい位置にあるなど、相当親切なつくりになっています。要望があるとしたら、マップ上ですでに入ったことのある部屋には名前がついてほしい、ということくらいでしょうか。


さて、システムを説明したところでシナリオの話に移ろうと思うのですが、今回は私の初見プレイ時に脱出成功するまでの心境を中継する形式で書きますね。重要なネタバレがある部分は文字色を透明にしていますので、読むときは反転してください。

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チュートリアル完了

(なるほど、相手はヤンデレストーカーが悪化して似た他人を誘拐監禁するに至ったのか。何としても脱出させてあげなくては)

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1日目探索中

(これやたら緊張感あるな…入っちゃいけない部屋で鉢合わせするのがすごく怖い。"周囲を窺う"で時間経過しないのありがたいな)

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2日目探索中

(よし、棚のねじ外しに成功。次は暗証番号か…まだ東の方に入ってない部屋あるし明日はそこ探索かな)

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3日目資料室探索中

(あ、この感じ、多分調査強行したらなんか物音立てちゃってバレるやつだ! どうしよう。まあでも説明見る感じやらかしても1発アウトにはならなそうだしセーブ分けたしやっちゃうか!)

バレる。お仕置き部屋へ連れていかれる

(えっっボイスあるの? パートボイスってやつかあ。 お仕置きはう~ん、首輪はめられた…。まあでもこれくらいなら耐えてくれシエラちゃん! 気丈な感じの声だし頑張れ。探索が強制的に終了になっちゃうの痛いな)

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4日目資料室探索中

(昨日ノートは手に入れといたから今日は音を出さずに調べられるな…なるほどもう少し資料が必要なのね)

物置探索中

(あ、2日目くらいに調べようとしたら後回しにしよって言われたのお仕置き部屋の入口だったのね…それはそれとしてこれで暗証番号分かったぞ!)

鍵を手に入れ玄関へ…リエルに捕まる。お仕置き2回目
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(割と早めに脱出の方法が分かった気がするが、隠れながら玄関に行くの難しいな…もしかしたら鍵入手後にまた何らかのイベントを起こさない限り玄関で鉢合わせしちゃうようになってるのか?)
(ああ、お仕置き2回目痛そう…これは…)

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5日目再度鍵を手に入れ玄関へ…捕まる

(あ、これやっぱり鍵をとって玄関直行しちゃいけないパターンかな?)
(今回のお仕置きは…跡は残らなそうだし前回よりマシ、なのか? もうここまで来たらいっそ先にバッドエンド回収しようか。お仕置きは何回目まであるんだろう)

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6日目、先にバッドエンドを見ることに。お仕置き4回目。
シエラの左腕を切断する旨を伝えられる

(ええええっ!!! 酷い!! なんで! シエラちゃん謝って!
そう、気弱になるのは分かる。もう変なことしないってア"ア"ア"ア"
まじかまじかえ~!! ちょっと待ってまじかこれ辛い うっわ
うそでしょこの展開はR18でしか見たことない…
声優さんの演技凄すぎる。なんでこんなシーンの台詞がこんなにも真に迫ってるんだ!)

(このシチュエーションは、フェチとしては私にはあまりにレベルが高すぎる…)

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7日目、【左腕の無い】立ち絵を見る

(つらい…しかも探索めちゃくちゃ不利な条件になってるし…。でもここまで来たらバッドエンドを避けるわけにはいかない。ごめんねシエラちゃん…許せ…)

お仕置き5回目

(やっぱりそうなるか……。私だったら発狂間違いなしだな…。)

ここで選択肢

(ここで分岐するのは明らかだなあ。まずはとことんバッドエンドな方を見てみるか。…………
時間を巻き戻して脱出させてあげるぜ。絶対に。)

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4日目のデータをロード。再度脱出を試みる

(よし、鍵の回収に成功。あとは廊下を通って玄関に向かうだけ)

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玄関前で待ち伏せされる。再度お仕置き2回目

(何回かタイミング測ったけど捕まるなあ。今回はまだ日数に余裕があるけどどうすれば逃げられるんだろう。あ、北側の部屋に鍵かかってて入れなかったところあったなあ。今鍵束持ってるわけだしそこで何かしらのイベントを起こせば脱出できるのかな)

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5日目、リエルの日記を読む。脱出成功

(ようやく脱出できた! 素敵な笑顔ありがとうシエラちゃん! しかし鍵を持って移動するとき見つからないか緊張したなあ。さて、エンディング回収しますか)

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はい、というわけで探索中にはホラーゲーム並みの緊張感、お仕置き中にはグロ展開への恐怖感とシエラへの憐憫を味わうことができる内容になっております。

しかしここまでの内容のみでは終わらないのが本作。エンディングのコンプリートを目指します。
上のプレイ内容で回収できたエンドは1と5の2つ。お仕置き5回目の時の選択肢でもう一つ、時間切れでもう一つ見られるだろうことは容易に推測できたのでエンド2,4に関しても難なく回収できました。

さて問題はエンド3です。いろいろ思いつくことを試してみてもなかなかたどり着けません。その過程でエンド1や2のスチルにはお仕置きの回数による差分が存在していることに気付くなど、細かい部分の整合性まで感じ取ることができました。

30分くらいは試行錯誤してもダメだったので、同梱の攻略情報を見ることに。
ああ~なるほど。その発想は一応あったけど、先に自分の部屋で調べてないとダメなのね! では回収に行きますか!

そしてエンド3を見た私はこの作品の魔力に取り付かれてしまいました。
ダントツでこのエンディングが好きですね。あの強気で希望を持っていたシエラの姿は遠い過去のものに。このダークさが私のツボにはまったようです。物理的には可哀そうなことになってないしね!

それにしても本作の声優さんがすごすぎてびっくりしました。特にエンド3とお仕置き4の演技が本当に迫力と説得力を持って本作の物語の悲惨さを伝えてきます。冒頭では気丈な態度を見せていたシエラが見る影もなくなるくらいのボイス、それと対照的に作中通してずっと気だるそうな喋りを続けるリエル。気になったのでクレジットにある声優さんの名前を検索してみると、シエラのCV担当の方は完全にエロ方面で活躍している方のようで、なんだか納得。リエル担当の方もフリーのナレーター業の方ということで、上手いのも頷けます。
(念のため繰り返しますが、本作には性交シーンなどはありませんし、それを連想させる要素もありません)

ちなみに同梱の攻略情報はめちゃくちゃ親切、逆に言えば完全に答えが載っているので、自力で頑張りたいという方は見ない方がいいかもしれません。
これによると私が1周目に脱出できなかったのは単に運が悪かっただけで、日記を読むのは脱出に無関係だった模様


とても万人に薦めるわけにはいかない本作ですが、可哀そうな目に遭う女の子にグッとくるという方にとってはドはまりするでしょう。逆にそういう状況は悲しくなっちゃうという方は大やけどする前に退散してください。


それでは。

こんにちは。今回はくまのこ道さんの「いちばん星の願いごと」をご紹介します。


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★favo
ジャンル:アイドルが路線変更を目指して特訓する短編ノベルゲーム
プレイ時間:1周10~15分/フルコンプまで1時間半程度
分岐:エンディング12種
ツール:LiveMaker
リリース:2015/5
備考:ミニゲームあり


いい作品を見つけました。いつも通り本作のオープニングの流れをご紹介します。
主人公の綺羅星ピピカ(名前変更可)は今を時めくスーパーアイドル。子役時代から築き上げたおバカ系キャラが広く受け入れられ、ライブをやれば常に熱狂。しかしそんな路線でずっと押していくのも何か違うと思い始めたピピカ。マネージャーに相談してみるも、キャラ変更は厳しいぞと言われてしまう。
しかし翌日、子役時代からすっかり路線変更しファッションモデルとなったIORIを見て、努力して自分を変えることを誓うのだった。


さて、本作は主人公が現役アイドルです。芸能界が出てくる作品というと、「気になるあの子は声優さんを目指しています♪」(主人公は同級生)や「CHANGE!!」(主人公がマネージャー)などが思い浮かびますが、アイドル本人が主人公な作品は本作が初めてだったかもしれません。しかも売れないアイドルではなく、スターアイドルです。しかしそんな彼女にも悩みはあって、売り出しているキャラと実際の自分との乖離を感じているというのです。私は全く芸能界について知りませんが、最初のマネージャーさんとの会話とかを見る感じでも大変そうだなと感じました。

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そんなピピカは「おんがく」「ファッション」「早口言葉」の3つの修業をしていくことになります。ここがミニゲーム要素になっており、変化があって面白いところでしたね。
簡単に言うと「おんがく」は記憶ゲーム、「ファッション」はクイズ、「早口言葉」は間違い探しです。いずれも初見で全問正解は少し難しいかなくらいの難易度です。私は早口言葉が苦手でした…。
この修行を一度行ったらイベントパートがあり、再度修行、というのを3回行ってエンディングに行きます。エンディングが12個もあってめちゃくちゃ多いので、うまく何の修業を行うかを選択してエンディングを回収しましょう。私は初回プレイ時訳も分からずそれぞれ1回ずつ修行したら、何も極められなかったノーマルエンドみたいなのに行きました。

このミニゲームを含めてですが、本作はエンディング回収や周回プレイにすごく親切なつくりになっているのが好印象なポイントの一つです。何でもいいから1つエンディングを見た後は、難易度調整が解放され、制限時間をなくしたり動きをゆっくりにしたりできます。問題は毎回同じなので、最悪覚えてしまうという攻略も取れます。そうして1度でもある項目を極めると、次回以降同じ修行をしたときに"前世の感覚を利用"することができるようになり、ミニゲームをスキップしてステータスを上げることができるようになります。言葉の選び方のセンスも面白いですね。

修行が終わるとイベントパートです。その日に何の修業をしたか、その出来栄えはどうだったかで違ったシーンになるため、1周15分程度のプレイ時間に比して相当多い展開が広がっています。それを3回行った後のエンディングでは、それまでのフラグを活かすような展開が多くすごく気持ちいいですね。

エンディングでは様々な展開がありますが、私が好きなのはやっぱりEND01でしょう。このエンディングではおんがく修行の成果に加え、ほんのりと恋愛要素が絡んできます。運転手の牧野さんですね。この展開では音楽を極めているので、ライブ用の歌を書きます。そしてなんと動機ごとに作詞ができます。まあ本当に自由に作詞できるわけではなく、選択肢から選ぶだけですがこれは効果抜群でした。そうして完成した歌は、作内でボーカロイドが歌ってくれます。なるほどこうした使い方があるのかとびっくりです。私はボーカロイドはあまり好きではないのですが、本作の使い方にはうならされました。演出として有効にはたらいていると思います。

他の展開でも、なるほどと思わせる方向で特訓の成果を生かしてくれます。笑いのネタが含まれていることもしばしば。
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私が不意を突かれたのはこちら。"チョイ悪ポッチャリ系ダンスユニット『XL』"は完全に狙ってるでしょ。ファンになります。
この人物も一発ネタ用ではなく、きちんとピピカの成長に寄与してくれますし、絡ませ方が上手いんですよ。

こんな感じでいろいろな展開があるので、ぜひコンプリートまでやってみてください。私はEND02,03が見つからないな~と思って探していました。どうやら作詞の時の遊び心が足りなかったみたいです。

そしてもう一つ驚いたことに、本作の作者さんは音楽素材サイトを運営されているんですね。本作のBGMもサイト上で公開している素材を使っているようでなるほどといった感じです。素材サイトはそこそこ知っているつもりですが、音楽素材とフリーゲームを同時にたくさん公開されている方がいるのは知らなかった……。


という感じで私をいろいろな意味で驚かせてくれた作品でした。欲を言うとEND01の歌がもう少し尺が欲しい(贅沢ですみません)。現状、主題が1度だけ登場して終わりって感じでちょっと寂しいので…
しかし本作がいい作品だったという感想は変わりませんので、ぜひ皆さんもプレイしてみてください。私は本作の印象が強くて、職場で危うく≪きらんほー☆≫とかいう独り言が出そうになってしまいました(爆)
ちなみにタイトル画面右下の鍵のアイコンからおまけへ進めますのでそちらもお忘れなく!

いつも以上にとっちらかった内容な気がしますが、今回はここまでです。それでは。

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